海洋温度差発電(OTEC)

大規模事業実施のための資金調達に向けたファシリテーションをします

小島しょ開発途上国の多くは、エネルギー源を海外からの化石燃料輸入に頼っており、エネルギー価格の高騰や安全保障の面で大きな課題を抱えています。また、気候変動の側面からは、再生可能エネルギーへの転換(緩和)や、水不足への対応(適応)も優先的な課題となっています。そのような中で、OECCでは、安定した持続可能なエネルギーの供給と、海洋深層水を複合利用するOTECの普及展開を進めています。沖縄県久米島にて実証運転されているOTECは、多様な産業を創出する「久米島モデル」として注目され、小島しょ開発途上国の自立的開発モデルへの展開が期待されています。

海洋温度差発電(OTEC)ってなに?

私達を取り巻く海洋は、水面に近い表層と深層では大きな温度差があります。この海洋のもつ温度差を利用して発電するシステムを海洋温度差発電(Ocean Thermal Energy Conversion:OTEC)といいます。OTECは、海の表層部の25~30℃の温かい海水を温熱源とし、深さ800~1000メートルの深層部にある5~7℃の海水を冷熱源として使用する発電システムです。2013年から沖縄県久米島町において実証施設が稼働しており、GHGを排出しない持続可能なエネルギーの供給に加え、地元自治体との連携のもと、深層海水の副次的利用による養殖漁業や冷温農業、食品や化粧品の開発等が行われ、地元の産業育成につながる「久米島モデル」が展開されています。

出典:政府広報

OECCの役割

OTECは、発電のためのプラント、海洋深層水を汲み上げる取水管に大きな資金が必要となります。OECCは、途上国開発や気候変動対策の国際資金等からの資金調達を行う際、道先案内人としてステップを確実に踏んで事業を進めていくことができます。発電分野の元エンジニアや、気候資金専門のスタッフが、島しょ国への久米島モデルの展開のため、導入技術にかかるアドバイスや、経済性分析、国際的気候資金調達の手続き支援等を行っています。

業務内容

国際的気候資金の調達に向けたファシリテーション

OECCは、日本政府や国際機関の気候資金のモビライゼーションを促進しています。ナウル、モーリシャス、パラオにおけるOTEC施設導入に向け、将来的な「緑の気候資金(Green Climate Fund:GCF)の獲得を視野に、気候技術センター・ネットワーク(Climate Technology Centre and Network:CTCN)やJICAの無償資金協力のスキームを使ったPre-FSやFSの実施をファシリテーションしています。

携わったプロジェクト

相手国政府、国際機関とのチームアップ

これまでに築き上げてきた国内外のネットワークを活かし、OTEC及び取水管導入に関心を持つ島しょ国政府・企業、日本政府・企業、国際機関、その他関係者のチームアップを行っています。

出典:UNFCCC flickr

ビジネスモデルの形成

OTECと取水管の建設には多大なコストを要するため、コスト回収が可能なビジネスモデルを同時に確立することが求められます。OTECで使用した海洋深層水を複合的に利用し産業振興を促す「久米島モデル」をそれぞれの小島しょ国の状況に合わせて展開するための、ビジネスモデル形成の支援を行っています。

パラオの水産養殖センターでのインタビューの様子

トピック

ナウルにおけるCTCN Pre-FSから得られた経験

2022年にCTCNのスキームを使い、ナウルにおいてPre-FSを行いました。
コロナの影響で現地への渡航や海洋データの実測が困難な中、既存のグローバルな低解像度海洋観測データベースに基づいた再解析を実施し、ナウル共和国海域の海洋環境を特定して、1MW規模のOTECプラント設計に必要なデータを構築する手法を東大、佐賀大の協力によって確立できました。その結果、ナウル共和国全体のOTECポテンシャルの評価が可能となり、解析地点の相互比較によって、最適な立地点の選定が可能となりました。

ナウルにおけるOTEC設置プラント特定調査