適応策

気候モデル(MRI/JMA-TL959)による南アメリカモンスーンの再現性(波動の位相伝播や群速度伝播)を示す降水量(mm)の緯度時間断面図(左が気候モデル、右が観測)。

出展:OECC二見(Tras las huellas del cambio climático en Bolivia)

気候科学・影響評価・適応策・緩和策・生物多様性と現場での知見に基づき、適応調査・適応ビジネス形成をサポートします

「気候変動に関する政府間パネル第6次評価報告書(IPCC)」によると、気候変動への適応は、温暖化の影響による危害を緩和する、もしくは有益な機会を活かすために、実際の又は予想される気候やその影響に順応するプロセス」(IPCC AR6 WG2 Full report P43/環境省 第2作業部会報告書の解説資料2023年8月)と定義されています。

OECCの役割

現場において、気候変動の影響を特定し、それに起因するリスクを軽減する対処法(適応策)を見出すことは簡単ではありません。それは、気候システムが目に見えるものではなく複雑系であるためです。
OECCは、そのような前提や制約を十分に踏まえ、科学主導型と現場に基づいたコミュニティ主導型の両面での適応に関する業務を行っています。また、OECCでは、気候力学や影響評価・適応策、途上国の政策立案支援、生態学、沿岸生態学、海洋等の専門家が、それぞれのバックグラウンドを活かし、適応の業務を行っています。今後は、ネイチャー・ポジティブや生物多様性に係る適応調査や適応ビジネス案件の形成に力を入れていきます。

Contribution of Working Group II to the Fourth Assessment Report of the Intergovernmental Panel on Climate Change, 2007

業務内容

AP-PLATの立ち上げ支援

OECCは、環境省および国立研究開発法人国立環境研究所が2017年に立ち上げた「アジア太平洋気候変動適応情報プラットフォーム(AP-PLAT)」の事前論点整理および初期版の構築支援を行いました。AP-PLATは、気候変動の影響評価や適応に関する研究成果等を適応政策立案や適応ビジネスへフィードバックすることを目指しています。
影響評価の分野では、世界各国が構築している気候モデルとスーパーコンピューターを用いた気候の将来予測を基に、各分野(農林水産、水資源、生態系等)の気候変化の影響が分析されています。OECCは、それらの分析結果を用いて研究者が可視化した影響評価や、一般利用のために開発されたツール等を取りまとめ、AP-PLATに搭載することを支援しました。また、民間による適応ビジネスの優良事例を選定・収集し、国内の「気候変動適応情報プラットフォーム(A-PLAT)」を介した情報発信に貢献しました。

適応政策立案支援ツール取りまとめ

地球温暖化の影響は地域ごとに異なり、また、その影響は、気象の極端現象や緩やかな気候の変化を介してさまざまな分野に及びます。そのため、どのような影響が起きるかを過去、現在、未来を通して可能な範囲で把握し、それに対する対処策を検討していくことが求められています。
OECCは、行政官やコンサルタントが利用できる既存の影響評価および適応策策定支援ツールの情報を取りまとめました。ツールは、①モニタリング、気候変動予測、影響評価・脆弱性評価等からなる科学主導型の適応策と、②住民や地域のニーズ把握から始まり、さまざまな実践を通じて復元力もしくは環境変化による影響への耐久力を高めるコミュニティ主導型の適応策の、両方について整理しています。

適応効果指標の調査およびガイドラインづくり

現在、適応事業の効果の評価方法が世界的に検討されています。OECCは、開発途上国において数多くの適応事業を実施している独立行政法人国際協力機構(JICA)の、適応事業の評価方法の検討を支援しました。緑の気候基金(GCF)や国際開発金融機関(MDBs)等の取組を調査の上、適応策の評価指標として裨益人口を用いることをJICAに提案し、その基本的な考え方を取りまとめました。この指標の考え方や実績の算定方法は、JICAの「気候変動対策支援ツール(JICA Climate-FIT)」に「気候リスク評価・適応策検討のガイダンス」として反映され、今後の活用が期待されています。

気候変動対策支援ツール(JICA Climate-FIT)

途上国への適応に係る技術や知見の共有

JICAは途上国行政官を対象に、課題別研修「気候変動への適応」を実施しており、OECCは受託機関として、研修カリキュラムの作成から講師・視察先の選定、研修員への指導を担当しました。研修員は、日本政府や民間企業・団体等の適応に係る政策や取組を学び、研修期間中にアクションプランの作成・発表を実施しました。
座学での学習のみならず、首都圏外郭放水路といった、都市水害を防止・軽減することを目的としたインフラ施設や気候の将来予測を行うスーパーコンピューター等の視察も実施しました。
このように、日本の気候変動適応策の具体的な取組や技術、知見の共有を通して、途上国の適応能力の向上に貢献しています。

JICAの気候変動適応策に関する動画の制作支援

JICAは、気候変動への取り組みを強化するため、開発途上国への支援を通じて蓄積した知見や支援の効果の発信を進めています。OECCは、JICAの支援業務の一環として、インドネシアとタイの2か国におけるJICAの気候変動対策支援(緩和策・適応策)についての取り組みをまとめた動画を制作しました。インドネシアでは、農業分野における気候変動によるリスク軽減を目的としたマングローブ保全や森林土地火災予防事業について、また、タイでは気候変動の影響と有効な適応策に関する事業について、国内外の関係者へのインタビューなどを通じて、情報をまとめた動画を制作し、2か国におけるJICAの気候変動対策支援の発信に貢献しました。

携わったプロジェクト

関連リンク

AP-PLAT

A-PLAT

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